食品用途発明は各国で何が違うのか?―日米欧の特許実務を調査してみた

ヨーグルト、サプリメント、食品添加剤等の機能性食品の発明について外国出願を検討する際、「日本では用途発明として成立しそうなのに、欧州では拒絶されてしまうのではないか」「米国ではどのようなクレームを書けばよいのだろうか」と疑問に思うことがあります。今回は、食品用途発明についての日米欧の取り扱いの違いについてご紹介します。

1.日本では用途発明という考え方が比較的確立している
日本では、2015年に機能性表示食品制度が開始されたことにともない、2016年4月以降の審査において食品用途発明の運用が変わりました。それ以前は「〇〇用食品」と謳っていても、「〇〇用」の部分の特徴は、物としての食品そのものを区別する要素にはならないとして審査上考慮されませんでした。

2016年4月以降、以下のような場合には「〇〇用」の部分の特徴が新規性・進歩性判断の考慮対象となります:
・客観的に通常の食品とは異なる構造・組成等を有すると解釈できる場合、又は
・物自体の構造は同じであっても、(i)物の未知の属性を発見し、かつ(ii)その属性による新たな用途への使用に適することを見いだした場合

例えば、「〇〇用食品組成物」や「〇〇誘導用組成物」といった請求項が成立する可能性があります。

出典1:特許庁審査基準
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/tukujitu_kijun/document/index/03_0204.pdf#page=4.00

もちろん、単なる効果の言い換えでは足りず、新たな作用・効果や用途を裏付けするデータが必要になりますが、「用途」自体を発明として評価する考え方が浸透していると言えます。

2.欧州では第二医療用途クレームが圧倒的に多い
欧州では、審査ガイドライン4.13.1に「However, if the known product is in a form in which it is in fact suitable for the stated use, though it has never been described for that use, it deprives the claim of novelty.」(しかし、既知の製品が、記載された用途に実際に適した形態であって、その用途について記載されたことがない場合、クレームの新規性は失われます。)とあります。つまり、日本の運用と異なり、「〇〇用食品組成物」や「〇〇誘導用組成物」といった請求項は、それらが既知の製品である場合にはその用途が新しくても新規性が認められません。

出典2:4.13.1 Interpretation of expressions such as “Apparatus for …”, “Product for … “
https://www.epo.org/en/legal/guidelines-epc/2025/f_iv_4_13_1.html

例外的に、いわゆる第二医薬用途(Second medical use)の場合には、第54条(5)に基づいて特許を取得できる可能性があります。

出典3:6.1 First or further medical use of known products
https://www.epo.org/en/legal/guidelines-epc/2025/g_vi_6_1.html

ただし、以前の記事「【欧州特許実務】食品用途発明における「in vivo」の境界とは?〜マウス細胞試験では不十分?特許性を支える実験データの考え方〜」でも触れましたが、医薬的用途の特許性には、科学的もっともらしさ(plausibility)が求められます。単に形式的に第二医薬用途の請求項を作成すればよい、というわけではなく、科学的もっともらしさを証明するデータの掲載が不可欠です。

今回、Danoneをはじめとする食品会社の特許を数十件調査しました。すると、新規菌株そのものを保護するケースを除けば、多くが”Substance X for use in treating…” や “for use in preventing…” といったEPC第54条(5)に基づく第二医療用途クレームで権利化されていました。

対象となっている用途も、
・肥満や代謝疾患
・腸内細菌叢の改善
など、多岐にわたります。

興味深かったのは、「食品会社だから食品クレームで取得している」というわけではないことです。むしろ、「食品として摂取されるものであっても、医学的用途として位置付けられる場合には、第二医療用途クレームとして保護を図る」という考え方が実務として定着しているように感じました。

食品組成物は従属項として残している一方で、「食品」という概念が完全に消えているわけではありません。実際に調査した欧州特許では、第二医療用途クレームを独立請求項としつつ、「food composition」や「fermented milk」などを従属項で限定している例が複数見られました。

つまり、医療用途を主軸に据えながら、食品として提供される態様も権利範囲に取り込んでいます。このクレーム構成は、食品会社らしい実務的なアプローチだと感じました。

3.米国では方法クレームが中心
一方、米国では事情が異なります。今回調査した案件でも、最終的には

「A method comprising administering…」

という方法クレームで権利化されていました。米国では Intended Use の問題があるため、「〇〇用組成物」よりも「投与方法」として構成した方が安定するケースが多いようです。

※Intended Useとは、用途の記載は原則として請求項の構造的限定とはみなされず、既知の製品がその用途を実施可能(capable of performing)であれば、新規性などを基礎付ける要素とは評価されにくいという考え方です。一方で、米国では医療行為は方法の発明として保護されるため、機能性食品についても「投与方法」としてクレームすることで保護を受けられる可能性があります。

出典4:2111 Claim Interpretation; Broadest Reasonable Interpretation
https://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/s2111.html

4.外国出願ではクレーム戦略を最初に考えることが重要
ここまで調査した結果を整理すると、
日本:用途発明という考え方が比較的確立しており、新たな用途で権利化できる可能性があります。
欧州:治療・予防など医学的用途であれば、第二医療用途クレームが本命になります。
米国:方法クレームが中心になります。

今回の調査で印象的だったのは、「食品用途発明」と一括りにして考えることはできないということでした。同じ技術内容であっても、日本では用途発明、欧州では第二医療用途、米国では方法クレームというように、各国で最適なクレームカテゴリーは大きく異なります。

外国出願を検討する際には、「どの国でどのクレームカテゴリーが最も適しているか」を早い段階で検討し、それを前提として明細書や実施例を準備することが重要です。

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この記事を書いた人

Yoshiharu Takahashiと申します。
都内特許事務所に所属する、元食品メーカー研究員の弁理士。化学・バイオ分野を中心に、特許出願、FTO調査、無効資料調査など、(2026年現在)13年以上にわたり知的財産業務に従事しています。
Food Patent Labでは、「食品×知財×経済」をテーマに、食品関連特許や技術動向、知財戦略について発信しています。記事に関するご質問や特許に関するご相談は、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。
ブログの定期更新:毎月1日・15日

About the Author
Yoshiharu Takahashi is a Japanese Patent Attorney with over 13 years of experience in intellectual property. On Food Patent Lab, he writes about food-related patents, innovation, and the business impact of intellectual property.

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