人権デューディリジェンスの意義について考える

近年、国際社会において「人権デューディリジェンス」という言葉を目にする機会が増えています。ESG投資やSDGsの広がりを背景に、企業は自社の利益だけでなく、サプライチェーン全体における人権問題にも責任を持つことが求められています。これは単なる道義的責任にとどまらず、企業経営そのものに直結する重要テーマです。

1.人権デューディリジェンスとは何か
人権デューディリジェンスとは、企業が自社や取引先の事業活動において人権侵害のリスクを調査し、防止・改善する仕組みのことを指します。国連「ビジネスと人権に関する指導原則」を契機として国際的に注目され、現在では欧州を中心に法制化も進んでいます。

例えばJETROの記事では、味の素株式会社がサトウキビ調達に関して人権調査を行った事例が紹介されています(JETRO「特集:動き出した人権デューディリジェンス―日本企業に聞く 味の素、サトウキビ調達をめぐる人権調査を実施(インドネシア)」2025年7月1日記事より)。こうした取り組みは、日本企業においても少しずつ広がりを見せています。

出典1:JETROのHP
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2023/0302/67c5c59776c9c373.html

2.人権デューディリジェンスの意義
個人的に、特に意義を感じるのは次の4点です。
・企業の信頼性向上:投資家や消費者は、人権や環境への配慮を重視する企業を高く評価する傾向があります。人権デューディリジェンスは、企業のブランド価値を守り、向上させる役割を果たします。

リスク回避:人権侵害が明るみに出た場合、取引停止や株価下落といった経済的損失は計り知れません。事前にリスクを洗い出すことは、経営上の保険とも言えます。

国際競争力の確保:欧州ではすでに人権デューディリジェンスに関する法整備が進んでおり、対応できない企業は国際市場から排除されるリスクがあります。日本企業にとっても「生き残り」のための要件となりつつあります。

長期的な持続可能性:短期的にはコストに見えるかもしれませんが、結果的に健全なサプライチェーンを築くことで、企業は長期的な安定と利益を確保できます。

参考として、こうした取り組みを支援するシステムに関する特許も存在します。

3.人権デューディリジェンスを支援するシステム特許(特許7315191
従来、製品やサービスの提供に関わる複数の組織(バイヤーやサプライヤーなど)が、環境・社会・人権などの情報を報告する際に、どの指標(項目)を入力すべきかを効率よく選択できないという問題がありました。

この特許は、組織ごとに入力項目や画面を柔軟に管理でき、効率よくリスク情報を集められる仕組みを作製するため、以下の点を工夫したシステムを提供します。
(1)指標入力の柔軟管理:組織ごとに、必須・任意など入力する指標を自由に設定可能。
(2)入力の効率化:ある組織で設定した入力内容を、他の組織にも簡単に複製して適用できる。
(3)リスク関連指標の管理:人権問題や災害リスクなども含め、必要に応じてバイヤーやサプライヤーに入力させられる。
(4)画面のカスタマイズ:組織ごとに最適化された入力画面を表示可能。

出典2:特許情報プラットフォーム
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7315191/15/ja

4.おわりに
一見すると「人権」というテーマは抽象的に聞こえるかもしれません。しかし実際には、企業の競争力や持続的成長を左右する、極めて現実的な課題です。人権デューディリジェンスは、単なる『社会的責任』という枠にとどまらず、『未来への投資』として考えることもできるでしょう。今後、日本企業がどのように取り組みを深めていくのか、注目していきたいと思います。

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この記事を書いた人

takahashi(高橋)と申します。弁理士として12年以上、特許出願・FTO調査・無効資料調査など、累計2,000件以上の案件を担当。化学・バイオ分野を中心に、国内外の知財戦略をサポートしています。

食品・知財・投資の交差点から現場の知見を発信中。記事へのご質問や国内特許・海外特許のご相談は、お問合せフォームよりお気軽にどうぞ。

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