1.学校で考えたアイスが特許になる?
皆さんがコンビニで買っているお菓子や飲み物、アイスの中には、実は「特許」で守られている工夫が沢山あります。
例えばグミキャンディ。
従来の方法では、片側に立体的なデザインができても、反対側はどうしても平らになってしまうのが課題でした。そこで登場したのが、特許第6137530号。スターチ型(でんぷんを使った型)に穴を空けることで、グミを押し抜くときにデザインの自由度を広げる技術です。おかげで、より多彩な形のグミが楽しめるようになりました。
出典1:特許情報プラットフォーム
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6137530/15/ja
出典2:カンロ「カンデミーナ」プレスリリース
https://www.kanro.co.jp/files/topics/2467_ext_05_0.pdf
また、皆が知っている「雪見だいふく」にも特許がありました。特許第1537351号では、特定のでん粉を加熱して得られる“粘弾性物”でアイスを包む技術が説明されています。これによって、まるで大福のように手でつまんで食べられるアイスが実現したのです。
出典3:特許情報プラットフォーム
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-S56-080771/10/ja
2.特許ってなに?
特許とは、発明を守るための法律上の権利です。特許を取ると、他の人がビジネスとしてその発明を勝手に使うことを禁止できます。
例えば、サッカー部で考えた新しいドリンクレシピを学園祭で販売するとします。そのレシピに特許があれば、同じ学園祭で他のクラスが真似して売ることを防げます。特許は「経済活動の中での独占権」なのです。
特許が成立するまでの流れは、おおまかに次のとおりです。
(1)特許出願
(2)審査請求(「審査してください」と申し込む手続き)
(3)審査(拒絶理由があれば対応)
(4)特許査定
(5)登録
3.家庭や学校で使うのは大丈夫?
特許権が効力を持つのは「業としての実施」の場合です。これは簡単に言えば、事業活動(ビジネス)として行うことを指します。
・サッカー部が部員のためにドリンクを作る
→ 事業活動ではないので特許侵害にはなりません。
・学園祭や地域イベントで繰り返し販売し、利益を得る
→「業としての実施」にあたり、特許侵害になることもあります。
つまり、特許権が存在していても、家庭や学校で楽しむ程度ならOK。でも、販売ビジネスに発展するとNGになるのが特許の基本ルールです。
4.食品分野の特許の特徴
食品特許には大きく分けて次のようなタイプがあります。
・製法:調理方法や製造工程の工夫
・成分:新しい素材や原料の利用
・用途:食品への新しい使い道
例えば「健康によい成分を混ぜ込んだ和菓子」も特許になります。特許第5314101号は、アロエを含んだわらび餅の特許です。見た目も食感も普通のわらび餅ですが、日常的においしく食べながら、糖尿病や高血圧などの予防・改善効果を得られるよう工夫されています。
出典4:特許情報プラットフォーム
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-5314101/15/ja
5.身近な食品特許の事例
食品特許の世界は意外に広く、次のような例があります。
・溶けにくいアイス:暑い日でも形が崩れにくい工夫
・大豆由来の代替肉:環境や健康に配慮したプラントベース食品
・もちもちしたアイス:食感を改良するための工夫
普段何気なく食べている商品も、裏では特許で守られています。
6.特許と社会・未来
食品開発には、数千万円から数億円もの研究費がかかることもあります。特許によって独占的に販売できる期間があるからこそ、企業は思い切って研究開発に投資できるのです。
その結果、私たち消費者は新しい食品を楽しめるようになり、社会全体として技術や食文化が前に進んでいきます。特許は、みんなが安全で新しい食品を楽しむための重要な仕組みなのです。
7.中高生が特許をとるときの特別ルール
「もし自分が発明したら、特許って取れるのかな?」と思う人もいるでしょう。実は、中高生でも発明者になれます。ただし、特許法には次のような決まりがあります。
特許法第7条
未成年者及び成年被後見人は、法定代理人によらなければ、手続をすることができない。ただし、未成年者が独立して法律行為をすることができるときは、この限りでない。
つまり、中高生が特許を出願するには、基本的に保護者の協力が必要ということです。出願人になること自体は可能ですが、手続きは親と一緒に進める必要があります。
さらに、特許を出願するには費用もかかります。専門家(弁理士)にお願いすると、数十万円単位になることもあるため、中高生だけでチャレンジするのはなかなか大変です。実際に出願を目指す場合には、保護者や学校、地域の支援を得ながら取り組むのが現実的です。
実際に中高生が特許を取った事例も存在します。
出典5:特許庁の広報誌
https://www.jpo.go.jp/news/koho/kohoshi/vol61/02_page2.html?utm_source=chatgpt.com
8.まとめ
特許に関心を持つことには、沢山のメリットがあります。例えば、自分のアイデアを「世界に一つのもの」として守る仕組みを知ることで、発明することの面白さや社会とのつながりを実感できますし、将来の進路やキャリアにもプラスになるかもしれません。実際に特許を出願できれば、自分が考えた工夫を公式に認めてもらえる喜びがあります。
ただし、特許を取るには時間や費用がかかるので、誰にでも気軽にできるわけではない点には注意が必要です。それでも、知的財産の仕組みを知っておくこと自体が、中高生にとって大きな学びになるでしょう。
特許はちょっと難しく感じるかもしれませんが、「もし自分が食品を発明したら?」と想像すると、特許の世界が少し身近に感じられるのではないでしょうか。次にお菓子を食べるときには、「これはどんな特許が関わっているんだろう?」と考えてみるのも面白いかもしれませんね。
