こんにちは。最近、チョコレート製品が値上がりしていると感じていませんか?
その背景には、私たちが普段あまり意識しないココアの原材料の「カカオ豆の価格高騰」があります。2025年に入り、ココアの国際価格は過去最高水準に達し、消費者の生活にも影響が出始めています。この記事では、なぜココアが高止まりしているのか、気候変動やアメリカの金融政策との関係、そして私たちに何ができるのかを解説します。
1.ココア価格、過去最高水準に
2025年6月現在、ココア先物価格(ニューヨーク市場)は1トンあたり約10,800ドル、ロンドン市場では約11,500ドルと、いずれも過去最高水準で推移しています。この価格は、わずか2年前と比較して約2〜3倍。長期的な高止まりが見込まれる中、企業だけでなく消費者にも波紋が広がっています。
最新のココア価格(リアルタイムチャート)は以下のページでご確認いただけます:
▶ Investing.com – ココア先物チャート(US Cocoa Futures)※ チャート内で「月足」に切り替えるには、左上メニューの「期間」から「1M(1か月足)」を選択してください。
2.要因について
(要因1)気候変動による減産
世界のカカオ豆の約60%を生産する西アフリカ(コートジボワール・ガーナ)では、ここ数年異常気象が頻発しています。
・過剰な降雨 → 病害の拡大(黒いさび病など)
・高温・干ばつ → 幼木の枯死、生育不良
2023年から2年連続で供給が需要を下回る状態が続いており、世界的な「カカオ不足」につながっています。
(要因2)FRBの利上げとアフリカ通貨の下落
もう一つの重要な要因が、アメリカの中央銀行FRBによる高金利政策です。
FRBがインフレ抑制のために金利を高水準で維持したことで、ドルが強くなり、アフリカの通貨(CFAフラン、ガーナ・セディなど)は大幅に下落しました。
コートジボワールやガーナの農家は、肥料・農薬など多くの資材を海外から輸入しています。
しかし、近年は通貨の下落により、それらの仕入れ価格が上昇。生産コストの増加と利益率の低下が、生産意欲の減退を招いています。
例えば、以下のチャートはガーナ・セディ(GHS)対米ドルの為替推移です。2022年以降、GHSは急速に価値を下げており、ドル建て資材の購入負担が重くなっています。
▶ ガーナ・セディ/米ドル(USD/GHS)為替チャートを見る(TradingView)また、コートジボワールで使用されているCFAフランも対ドルで長期的に下落傾向にあります。以下のチャートで確認できます。
▶ CFAフラン/米ドル(USD/XOF)為替チャートを見る(TradingView)※ 上記リンク先で「Full chart」から「期間:月足(1M)」を選択すると、長期の推移が分かりやすくなります。
(要因3)農家の高齢化と構造的課題
西アフリカの多くのカカオ農家は小規模で、高齢化が進んでいます。若い担い手が育たず、農地の放棄や離農が増加。フェアトレードやサステナブル調達の支援があっても、根本的な構造問題は解決されていません。
3.コモディティ市場でも注目が集まる
このような供給不安定の構図から、投資家の間でもココアは「注目すべきコモディティ」となりつつあります。先物市場への投資やファンドの買いが価格をさらに押し上げる要因となり、結果として高止まりが継続しています。
4.私たちの生活にも影響が
製菓メーカー各社はチョコレート製品の値上げや、内容量を減らす「ステルス値上げ」といった対応を進めています。業務用チョコレートやスイーツ材料の価格も上昇しており、外食チェーンやベーカリー、カフェでもその影響が徐々に広がっています。「最近チョコが小さくなった気がする」、「お菓子作りの材料費が前より高い」―そんな変化を感じている方も多いのではないでしょうか。
5.代替チョコレートという新しい選択肢
こうした状況の中で、注目されているのが「カカオを使わないチョコレート」です。2025年6月、イオングループはこの課題に対する一つの答えとして、カカオ不使用のチョコレート風菓子「チョコか?」を発売しました。この商品は、ドイツのフードテック企業「Planet A Foods」が開発した、ひまわりの種由来の代替チョコレート「ChoViva(チョビバ)」を使用しています。ChoVivaは、カカオと同様に発酵・焙煎といった工程を経ることで、香り・風味・口どけまでチョコレートのように再現した革新的な素材です。
出典:トップバリュ公式「チョコか?」紹介ページ
https://www.topvalu.net/tv-chococa/
6.チョコレートの“未来”を考えるきっかけに
気候変動や農業・通貨の問題は、すでにチョコレートという身近な食品にまで影響を及ぼしています。だからこそ、今回のような代替食品の登場は、サステナブルな選択肢としても注目に値します。もちろん、本物のチョコレートにしか出せない魅力もありますが、私たちが今後も長く「チョコレート風味」を楽しみ続けるためには、こうした新技術や発想にも目を向けていく必要があるのかもしれません。
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