こんにちは。皆さん、「CVC(シーブイシー)」って聞いたことありますか?
最近、味の素が“未来の食”を見据えてスタートアップ企業に投資するというニュースが発表されました。
今回出資されたSomite社は、iPS細胞から特定の細胞を効率的に誘導するプロセスを、AIを用いて最適化するプラットフォームを開発中のスタートアップです。これは、食と健康の領域だけでなく、再生医療分野との橋渡しにもなる可能性があります。
出典1:味の素公式HP 「味の素㈱、iPS細胞の分化誘導プロセスを最適化するAIプラットフォーム開発スタートアップのSomite社に出資」
https://news.ajinomoto.co.jp/2025/06/20250613-01.html
このような企業によるスタートアップへの投資のことを「CVC」といいます。
少し難しそうに感じられるかもしれませんが、実はこのCVC、じわじわと私たちの生活にも浸透してきています。今回は、食品業界と医薬品業界のCVCを比較しながら、「CVCって結局なに?」「私たちの暮らしにどう関係あるの?」というところまで、わかりやすくご紹介します。
1.そもそもCVCってなに?
CVCとは「コーポレート・ベンチャー・キャピタル(Corporate Venture Capital)」の略で、企業が将来性のあるスタートアップ企業に出資する仕組みのこと。
普通の投資とは少し違って、「将来自社の役に立ちそうな技術やアイデアを取り入れるため」の投資なんです。
VC(ベンチャーキャピタル)との違いは?
一般的なVC(ベンチャーキャピタル)は「リターン目的の出資」が中心ですが、CVCは「自社の戦略と連携した出資」である点が大きな違いです。
例えば、大手食品メーカーが健康志向の食事を開発しているスタートアップに投資したり、医薬品会社が新しい治療法を開発しているベンチャー企業にお金を出したりするのがCVCの一例。
ポイントは「儲かりそうだから」だけでなく、「自分たちの未来の事業に役立つから」という理由で投資していること。いわば“未来のタネまき”なんですね。
表1.日本の食品企業によるCVCの例
企業名 | CVC設立年 | 公表されている規模 | 投資テーマ・特徴 |
---|---|---|---|
味の素 | 2020年頃(本格化は2024〜) | 規模は非公開 | 「Food & Wellness」「Healthcare」「ICT」「Green」の4成長領域に投資。米シリコンバレーにも拠点を設置し、米国スタートアップへの投資も積極的に展開中 |
キリンホールディングス | 2020年 | 約50億円 | 飲料・健康分野を中心に、グローバルな視点でフード×ヘルス領域への投資を推進中 |
サントリー | 2021年 | 規模非公開 | フードテック、ヘルス&ウェルネス、サステナビリティ、AI・データなど複数領域でスタートアップ出資を実施。直接出資およびVCファンドへのLP出資あり |
出典2:Monozukuri Ventures HP 「【CVCレポート】日本企業の100社以上がハードウェアに投資するCVCを設立、2020年からの3年でファンド数が倍増」
https://monozukuri.vc/ja/fundresearch2304/?utm_source=chatgpt.com
2.味の素のCVCは「食と健康」の未来のため
味の素は2020年に「AJINOMOTO CVC」を始め、食や健康、環境などの分野でスタートアップ投資を進めています。キーワードは「アミノサイエンス®」。アミノ酸の研究をベースに、社会課題の解決を目指しています。
国内に加え、2024年にはシリコンバレーにも拠点を設立。世界の技術とつながりながら、未来の食と健康を育てようとしています。
3.医薬品会社のCVCは「命を救う技術」に直結
一方で、医薬品会社のCVCは少し性格が異なります。
製薬会社の場合は、もっと直接的に「治療法」や「創薬技術」などに関わってきます。例えば、がんの新しい治療法や、難病に効く薬の研究をしているベンチャー企業に投資し、共同開発を進めるといったケースです。
こちらはより専門性が高く、成果が出るまでに時間もかかりますが、成功すれば「これまで治せなかった病気が治るようになる」といったインパクトがあります。
表2.食品企業CVCと製薬企業CVCの比較
項目 | 食品企業(味の素など)CVC | 製薬企業(エーザイ・中外など)CVC |
---|---|---|
投資テーマ | フード×ヘルスケア/AI/発酵/機能性 | 創薬プラットフォーム/ADC/遺伝子治療/免疫 |
主な目的 | 新市場開拓、技術革新、データ活用 | 自社パイプライン補強、創薬技術の先取り |
地理的展開 | 国内+シリコンバレー | 国内+米国ボストンやシリコンバレー等の拠点 |
協業スタイル | 技術シーズの共同開発+データ連携 | 大学ベンチャーとの研究連携、ライセンス契約 |
時間軸・リターン | 中期~長期の視野、事業創生と共創を重視 | 長期のR&Dリターン重視、深い技術評価と実装強化 |
4.私たちの暮らしにどう関係あるの?
こうしたCVC活動って、なんだか遠い世界の話に聞こえるかもしれません。でも実は、じわじわと私たちの生活にもつながってきているんです。
例えば:
・腸内環境を整える新しいタイプのヨーグルトが生まれたり
・睡眠の質を改善するサプリや飲み物が登場したり
・植物由来の代替肉がより美味しく、手に取りやすくなったり
こうした商品がスーパーやコンビニに並ぶのも、食品会社がCVCを通じて新しい技術を取り入れているからこそ。
医薬品業界のCVCで言えば、将来的に「飲み薬ではなく遺伝子を使った治療法が普及する」といった変化が、10年後には私たちの日常的な選択肢のひとつになるかもしれません。
5.まとめ
企業がCVCを通じてスタートアップとタッグを組むことで、私たちの生活は少しずつ、でも確実に便利で豊かになっていきます。
これまでの「大量生産・大量消費」では対応しきれなかった、個人の体質やライフスタイルに合わせた食品・医薬品がどんどん生まれる時代。その土台を作っているのがCVCなんですね。
ちょっと難しそうに見えるビジネスの話も、実は日々の買い物や食卓の中にヒントがあります。「あ、この新商品、実はCVCの成果かも?」と感じることがあれば、少し未来が近づいて見えるかもしれません。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄や金融商品の購入・売却を勧誘するものではありません。投資に関する最終的な判断はご自身で行ってください。また、本記事の内容によって生じたいかなる損失についても、当サイトでは一切の責任を負いかねます。