近年、「AI(人工知能)」と「食」を組み合わせた研究が世界中で注目を集めています。なかでも身近な調理法である「フライ(揚げ物)」は、おいしさの一方で、大量のエネルギーや油を消費するため環境負荷が高いと指摘されてきました。こうした課題に対し、最新の研究ではAIを活用することで、より持続可能な揚げ物の実現につながる可能性が示されています。
1.なぜフライにAIが必要なのか?
揚げ物の調理はシンプルに見えて、実はとても複雑です。
・油の温度
・揚げる時間
・食材の種類やサイズ
・使用する油の劣化度
これらが微妙に影響し合い、食感や風味、油の吸収量が変わってしまいます。従来は「職人の勘」に頼っていた部分も多く、再現性や効率に課題がありました。
ここにAIを導入すると、膨大な調理データを解析し、最適な温度や時間を自動で調整できます。その結果、
・食品の品質向上(サクサク感や風味の安定化)
・油やエネルギーの使用量削減
・廃棄コストの削減
といったメリットが期待できます。
2.研究レビューのポイント
今回紹介するレビュー論文は、過去10年ほどの研究を総まとめしたものです。特に注目すべきポイントは以下の通りです。
(1)プロセス最適化:AIを用いたシミュレーションや機械学習により、油温・時間をリアルタイムで最適化。省エネ調理や食品ロス削減につながる。
(2)品質管理:画像認識やセンサー技術と組み合わせ、揚げ上がりの色や質感を自動判定。人間の感覚に頼らず、安定した品質を実現。
(3)サステナビリティへの貢献:使用油の寿命を延ばすことや、エネルギー効率を上げることで、環境負荷を大幅に低減できる可能性がある。
3.投資家や企業にとっての意味
この分野は、単に「調理を便利にする技術」ではありません。
・外食産業:フライヤーの自動制御によってコスト削減、安定した品質提供が可能
・食品メーカー:新しい調理家電や加工食品の開発に直結
・サステナブル投資:環境負荷を減らす技術として、SDGsの観点からも注目度が高い
つまり、AIフライ技術はフードテック × サステナビリティ × 投資の交差点にあるテーマといえます。
4.まとめ
揚げ物とAIという、一見ミスマッチに思える組み合わせですが、実は「未来の食」を考える上で大きな可能性を秘めています。環境に優しく、しかもおいしい――そんなフライをAIが実現してくれる日も遠くないかもしれません。
今後は、この分野で特許出願や新技術開発も進むと予想されます。フードテックや次世代技術に関心のある方は、要チェックのテーマといえるでしょう。
出典:Sustainable food frying enhanced by AI: A comprehensive review(ScienceDirect, 2025年)
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0963996925017144?via%3Dihub