NMNと似ているけど違う!ナイアシンとの意外な関係とは?【NMN後編】

こんにちは。今回は、NMN関連のお話の後編です。「NMN」に加えて、「NR」といった抗老化サプリや、身近なビタミン「ナイアシン」との関係についてご紹介します。

老化のメカニズムにはさまざまな説がありますが、その中でも注目されているのが「NAD⁺(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)」という物質です。このNAD⁺は、細胞のエネルギー代謝やDNA修復、サーチュイン(長寿遺伝子)の活性化などに関与する、いわば“若さを支える鍵”とも言える存在。ところがNAD⁺は加齢とともに減少してしまうため、体内でNAD⁺を効率よく作り出す前駆体(材料)が注目されるようになりました。

その代表格が「NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)」という成分です。NMNは高価なサプリメントとして販売されており、芸能人や著名人が愛用していることでも知られています。しかし実は、NAD⁺の前駆体となる成分はNMNだけではありません。私たちが普段の食事やサプリメントで摂っている「ナイアシン(ビタミンB3)」も、その一種なのです。

1.ビタミンB3には種類がある?
「ナイアシン」という名前はよく聞くと思いますが、実はその中にはいくつかの種類があります。主なものは以下の3つです。
ナイアシンアミド(NAM):マルチビタミンによく含まれる形。水溶性で刺激が少なく、肌荒れ改善や健康維持にも使われます。NAMはサルベージ経路を通じてNAD⁺に変換されます。
ニコチン酸(NA):かつてはナイアシンといえばこの形でしたが、大量摂取で「ナイアシンフラッシュ」と呼ばれる皮膚のほてりが起きるため、最近では控えめに。
ニコチンアミドリボシド(NR):比較的新しい形のサプリ成分。海外で人気があり、日本では一部輸入品として扱われます。NRは体内でリン酸化されてNMNに変換され、その後NAD⁺になります。

そして、
ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN):NMNはビタミンB3代謝経路の中間体で、NAD⁺の直接的な前駆体であり、代謝経路が短いことから変換効率が高いと言われています。

これらはすべて、最終的に体内でNAD⁺へと変換されますが、代謝のルートや効率は異なります。

比較表:NMN・NR・NAMの違い

成分一般名NAD⁺への変換価格帯入手性特徴
NMNニコチンアミドモノヌクレオチド最も近い高価輸入品が多い抗老化研究で注目
NRニコチンアミドリボシドNMNを経てNAD⁺に中価格海外中心海外サプリに多い。ビタミンB3の一種
NAM/NAナイアシンアミド/ニコチン酸比較的変換しやすい安価市販サプリに多いビタミンB3の一種

このように見ると、私たちが普段摂っているナイアシン(NAM)も、NAD⁺の前駆体として重要な役割を果たしています。つまり、「高価なNMNを摂らなくても、NAMの摂取によってある程度はNAD⁺の生成に寄与する可能性がある」と言えます。ただし、ナイアシンを摂取した場合とNMNを摂取した場合で、NAD⁺の生成効率や生理的効果にどの程度の差があるかは、現在も研究が進められている段階です

出典1:NAMを外用薬として処方して肌の老化兆候を改善した事例
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/j.1346-8138.2008.00537.x?utm_source=chatgpt.com

出典2:NRをウェルナー症候群の患者に処方して早期老化が改善した事例
https://www.sciencedaily.com/releases/2025/06/250609020625.htm?utm_source=chatgpt.com

2.ナイアシンの見直しと注意点
マルチビタミンなどに含まれている「ナイアシン」の成分表を見ると、多くは「ナイアシンアミド」と記載されています。これはNMNよりもずっと安価で、長年にわたって安全性も確認されてきた栄養素です。毎日欠かさず摂取している方も多いのではないでしょうか。

ただし、ナイアシンも摂りすぎには注意が必要です。特にニコチン酸は、過剰摂取により肝機能に負担をかけたり、血管拡張による「ナイアシンフラッシュ」を引き起こすことがあります。一方で、ナイアシンアミドは比較的安全ですが、長期的な過剰摂取には医師の判断が必要です。

3.まとめ:身近な栄養素に目を向けてみよう
NMNはたしかに注目される成分ですが、私たちの身近には、すでに有効な成分があることも見落とせません。ナイアシン(特にナイアシンアミド)は、マルチビタミンに含まれ日常的に摂取されているにもかかわらず、NAD⁺の代謝にも関与している“影の実力者”とも言えます。

高価なサプリを試す前に、まずは基本的な栄養の摂取を見直してみるのもよいかもしれません。健康や老化対策は、意外と“足元”にあるのです。

出典3:
Nicotinamide mononucleotide, a key NAD⁺ intermediate, treats the pathophysiology of diet- and age-induced diabetes in mice. Cell Metabolism
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21982712/

出典4:
Nicotinamide riboside is uniquely and orally bioavailable in mice and humans
https://www.nature.com/articles/ncomms12948

出典5:
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」よりナイアシンの推奨摂取量と上限値
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html

出典6:
NIH Office of Dietary Supplements: Niacin Fact Sheet for Health Professionals
https://ods.od.nih.gov/factsheets/Niacin-HealthProfessional/

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この記事を書いた人

takahashi(高橋)と申します。弁理士として12年以上、特許出願・FTO調査・無効資料調査など、累計2,000件以上の案件を担当。化学・バイオ分野を中心に、国内外の知財戦略をサポートしています。

食品・知財・投資の交差点から現場の知見を発信中。記事へのご質問や国内特許・海外特許のご相談は、お問合せフォームよりお気軽にどうぞ。

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