アメリカの食品から「人工着色料」が消える日 〜“Make America Healthy Again”計画と食の大改革〜

こんにちは。
今日はアメリカで進んでいる大きな「食品の改革」についてご紹介します。カラフルなお菓子やシリアル、アイスクリームでおなじみの人工着色料(合成着色料)が、今まさにアメリカで次々と姿を消そうとしています。

これは単なる企業のトレンドではなく、アメリカ政府主導で進められている“Make America Healthy Again(アメリカを再び健康に)”というキャンペーンの一環。健康志向の高まりや消費者の意識の変化を背景に、大手食品メーカーが次々と人工色素の使用をやめると宣言しています。

1.人工着色料って何が問題なの?
アメリカで一般的に使われているFD&C色素(Red 40、Yellow 5、Blue 1など)は、石油由来の合成化学物質です。日本でも一部の食品に使われており、子ども向けのお菓子や飲料に多く含まれています。

出典1:消費者庁HP
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fscc_cms101_250602_09.pdf

研究によっては、以下のようなリスクが指摘されています:
・多動性(ADHD)との関連
・免疫への刺激
・肥満やDNA損傷への影響の可能性
*あくまで一部研究に基づくもので、明確な因果関係は断定されていません。

2.アメリカ政府の動き:2026年までに段階的廃止へ
2025年4月、ロバート・F・ケネディ・ジュニア保健福祉長官と、FDA(食品医薬品局)のマーティー・マカリー長官は、以下のような政策を発表しました。
・「Citrus Red No.2」や「Orange B」の認可を近く取り消す
・「Red 40, Yellow 5, Yellow 6, Blue 1, Blue 2, Green 3」など、主要なFD&C色素を2026年末までに段階的に禁止
天然由来の着色料(例:バタフライピー、紅藻抽出物)への切り替えを迅速化

このように、アメリカでは石油由来の色素が”不要”な時代へと移行しつつあります。

3.大手食品メーカーの対応
各社も政府の動きを受けて、積極的に色素の使用中止を表明しています。

企業名方針・時期
Kraft Heinz(クラフトハインツ)新製品には人工色素不使用、全製品を2027年までに切り替え
General Mills(ゼネラル・ミルズ)シリアルや学校向け食品は2026年夏までに、全製品は2027年までに無着色化
J.M. Smucker2027年末までに完全に人工着色料を廃止
Hershey(ハーシー)スナック類は2027年末までに合成色素を廃止
PepsiCo(ペプシコ)Lay’sやTostitosなどのスナックを年内に天然色素へ切り替え
Nestlé USA(ネスレ米国)2026年半ばまでに90%以上の製品が無着色に
Conagra Brands冷凍食品は2025年末までに、学校給食向けは2027年までに無着色化
Grupo Bimbo(メキシコ)2026年末までに人工色素を廃止(アメリカ市場含む)

4.アイス業界も変わる!
アメリカのアイスクリームメーカーの売上の90%以上を占める企業が、2028年までにFD&C色素を廃止することで合意しています(※乳製品ベースのアイス限定)。

出典2:Bloomberg 「米アイスクリーム企業、多くが7種の合成着色料排除へ-2028年までに
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-14/SZEDVRT1UM0W00

5.カラフルなお菓子はどうなるの?
当然ですが、見た目の派手さは抑えめになります。自然由来の色素は鮮やかさに限界があるため、「いつものあのオレンジのチーズスナック」や「レインボーアイス」の色が薄くなるかもしれません

ただ、消費者は「色より健康」を選び始めているのが大きな潮流です。

6.トランプ大統領と「サトウキビコーラ」の話と関係ある?
最近、トランプ大統領が「本物の砂糖(サトウキビ糖)」を使ったクラシックなコカ・コーラを自らのブランドで復活させたという話題がニュースやSNSで注目を集めました。人工甘味料ではなく、昔ながらの「リアルシュガー」で作られた“Trump Cola”のような商品です。

7.共通点:加工食品の“回帰”トレンド
この動きも、今回の「人工着色料廃止」と方向性が似ています。

共通点内容
消費者の志向より「自然に近いもの」「体にやさしいもの」を求める流れ
反・人工志向合成甘味料や人工色素など、“ケミカル”なものを避ける
政治・ブランド戦略トランプ氏は“Make America Great Again”の延長で「昔ながらのアメリカ的な価値観(本物志向)」を訴求している

つまり、今回の「人工着色料の廃止」も「サトウキビのリアルコーラ」も、「加工されすぎた現代食品」からの揺り戻しという、大きなうねりの一部なんです。

8.まとめ
・アメリカでは2026〜2027年を目処に、合成着色料の使用が急速に廃止される流れです。
・大手食品企業はすでに行動を開始し、健康志向の高い食品市場が急拡大中。
・トランプ大統領の「リアルコーラ」も同様の時代の潮流を反映していると言えます。

補足:日本への影響は?
現時点では日本の食品規制や企業方針には大きな変化は見られませんが、アメリカ発の動きは数年遅れで日本にも波及することが多いため、今後は「着色料・甘味料フリー」の製品が日本でも主流になる可能性があります。

出典3:Reuters “Food companies to phase out artificial colors amid ‘Make America Healthy Again’ campaign”
https://www.reuters.com/sustainability/boards-policy-regulation/food-companies-phase-out-artificial-colors-amid-make-america-healthy-again-2025-07-22/

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この記事を書いた人

takahashi(高橋)と申します。弁理士として12年以上、特許出願・FTO調査・無効資料調査など、累計2,000件以上の案件を担当。化学・バイオ分野を中心に、国内外の知財戦略をサポートしています。

食品・知財・投資の交差点から現場の知見を発信中。記事へのご質問や海外特許のご相談は、お問合せフォームよりお気軽にどうぞ。

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