前回の記事で「天然ウナギ」の現状についてお届けしましたが、今回はその対極ともいえる“次世代うなぎ”の話題です。土用の丑の日が近づくと毎年話題になるのが、日清食品が手がける「プラントベースうなぎ 謎うなぎ」。2023年、2024年と販売されるやいなや即完売し、今年2025年もついに数量限定で発売が決定したようです。
1.まるで本物!進化系うなぎ「謎うなぎ」とは?
「謎うなぎ」は、動物性原料を一切使用せず、植物由来100%で作られた“うなぎ風”食品。ただの代替品と思うことなかれ。そのリアルな見た目・食感・香ばしさは、本物の蒲焼を彷彿とさせる仕上がりです。
出典1:日清食品公式HP 「プラントベースうなぎ 謎うなぎ」
https://www.nissin.com/jp/company/news/13349/
ちなみに、この「謎うなぎ」には、日清食品が取得している特許技術(特許第6999845号)が使われています。
「動物由来の原料を使わずに、どうやって“うなぎらしさ”を出しているのか?」
その特許内容を少し深掘りしてみようと思います。
出典2:特許情報プラットフォーム
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-6999845/15/ja
2.動物性原料ゼロでも“うなぎ感”を再現する三層構造とは?
この「謎うなぎ」は、実は単なる大豆ミートの塊ではありません。ウナギの身・脂・皮の質感を忠実に再現するために、「三層構造」というユニークなアプローチがとられています。
2-1 身層:ふっくらジューシーな“白身”の再現
ウナギの柔らかくしっとりした身を再現するために、膨化処理された「組織状植物性たん白(大豆ベース)」を活用。そこに分離大豆たん白とメチルセルロースなどを加えてゲル化し、優れた食感と保形性を両立しています。加熱時のジューシーさも工夫されており、動物性原料を使っていないことを忘れるほどの仕上がりです。
2-2 中間層:ウナギ特有の脂のりを植物で再現
脂の層には、植物油をベースにしたゲル状の中間層が挟まれています。使用されているのは、ジェランガムやキサンタンガムといったゲル化剤。中間層を設けることでより一層、ウナギ様の食感や風味が得られます。
2-3 皮層:炙ったときの香ばしさと弾力を再現
最上層にはウナギの“皮”を模したゲル層を形成。アルギン酸やメチルセルロースに、でんぷんや大豆たん白を混ぜ、表面をバーナーで炙ることで、焦げ目・凹凸・皮の弾力まで再現。蒲焼ならではの“焼き目”がしっかりつき、見た目からして本物そっくりです。
3.各層をつなぐ技術も植物由来
この三層をきれいに一体化させるには、層同士の“接着”も重要です。通常は卵白などを使う場面ですが、本特許では植物由来成分を活用し、熱による接着を実現しています。
こうした層ごとの役割分担と技術的工夫が、「謎うなぎ」のリアルな再現性を支えているのです。植物性食品がここまで来たか、と驚かされる技術ですね。
4.ちょっと気になる“添加物”の正体は?
「アルギン酸」や「メチルセルロース」など、聞き慣れない名前が並ぶと、「添加物が多そう…」「体に悪いのでは?」と感じる方もいるかもしれません。でも実は、これらはどれも自然由来の成分を加工したもので、食品の安全性が厳しくチェックされている日本では、長年にわたって幅広く使われている素材なんです。
例えば、
・アルギン酸は、昆布やわかめなどの海藻に含まれる成分。
・メチルセルロースは、植物の繊維(セルロース)をもとにしたもの。
・ジェランガムやキサンタンガムは、微生物の働きで作られる天然のゲル化剤。
これらは、食品の形や食感を整えたり、層同士をうまく接着するために使われているだけで、体に害があるような成分ではありません。
もちろん、どんな食品でも「多すぎ」はよくないもの。でも、「謎うなぎ」のような技術は、植物素材だけでおいしいものを作ろうという工夫のたまもの。少しだけ視点を変えて、“食の進化”を楽しむ気持ちで見てみるのも面白いかもしれません。
5.プラントベースが拓く、新しい食のかたち
天然資源の保全やサステナブルな食生活が注目される中、この「謎うなぎ」はその象徴的な存在です。「本物と遜色ない体験」を提供しながら、環境にもやさしい選択肢を示してくれる商品です。天然ウナギの希少性や価格高騰が続く中、こうした代替食品が私たちの食卓にも少しずつ馴染んでいくのかもしれませんね。