世界で注目!抹茶ブームと特許技術の舞台裏

最近、スーパーやカフェで「抹茶ラテ」や「抹茶スイーツ」を見かける機会が増えたと感じませんか?
健康志向の高まりや和食ブームに伴い、抹茶の人気は世界的に急上昇しています。特にアメリカやヨーロッパでは「MATCHA」という言葉自体がブランド化し、抹茶を使った商品が次々とヒットしています。

一方で、価格高騰も
人気が高まる一方で、抹茶価格の高騰も問題となっています。その理由は主に以下の通りです:

  • 生産できる地域や農家が限られている
  • 生産者の高齢化による供給不足
  • 海外での爆発的な需要増

こうした要因が重なり、抹茶はまさに「争奪戦」の状態です。

1.抹茶関連の特許が示す未来
抹茶市場の裏側では、多くの特許が出願・登録されています。これらは、限られた抹茶資源を効率的に使いながら、高品質な製品を作るための技術です。

発明の名称 出願人/権利者 要約 登録番号
抹茶香味付与組成物 長谷川香料株式会社 抹茶香味付与に有用な抹茶香味付与組成物を提供するため、特定のスルフィド化合物を含む、抹茶香味付与組成物を提供する。 特許7469281
抹茶風味付与剤及びこれを含有する緑茶飲料 サントリーホールディングス株式会社 抹茶の使用量を増やすことなく抹茶風味を増強することができる抹茶風味付与剤を提供するため、抹茶等の粉砕茶葉に対して所定量の亜鉛を含有させる。 特許7339398
抹茶香味改善剤 小川香料株式会社 抹茶風味飲食品に少量添加することにより、抹茶が本来有する甘い香味、並びに高級抹茶が有する濃厚感を付与することができる抹茶の風味を有する飲食品の香味改善剤の提供。 特許6814259
抹茶香味改善剤 小川香料株式会社 抹茶風味飲食品に少量添加することにより、抹茶が本来有する甘い香味、並びに高級抹茶が有する濃厚感を付与することができる抹茶の風味を有する飲食品の香味改善剤を提供するため、特定のエポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドを含有させる。 特許6860487
抹茶風味付与乃至抹茶風味改善剤 長谷川香料株式会社 抹茶を含有する飲食物に極微量添加することにより、従来にない抹茶独自の爽快な苦味・甘さ・香ばしさのある豊かな風味、じんわりと拡がる旨味とお濃茶を点てた時の様な濃厚な茶葉感を付与する抹茶風味付与乃至抹茶風味改善剤を提供するため、(E)-6-ノネナールを有効成分とする抹茶風味付与乃至抹茶風味改善剤を含有させる。 特許5918897
退色しにくい緑茶およびその製造方法 三井農林株式会社 茶葉が本来有する鮮やかな緑色、風味およびその他の有効成分を失うことなく、保存時の緑色の色調安定性および風味安定性に優れた緑茶を提供するため、荒茶の製造工程において、所定のアルカリ性溶液を添加する緑茶の製造方法。 特許6288761
抹茶含有食品を製造する方法及び抹茶を含有する食品 三井製糖株式会社 抹茶色の発色が良い食品を製造する方法を提供することを目的とし、抹茶含有食品を製造する際、食品に、抹茶及びイソマルツロースを同時に又は別々に添加する工程を含む。 特許6100498
透明容器入り飲食品及びオフフレーバー抑制方法 株式会社明治 茶類を含む透明容器入り飲食品において、太陽光、蛍光灯などの光照射によるオフフレーバーの発生を抑制するため、茶類を含む飲食品を、所定の波長領域の光を実質的に遮光する透明容器に充填する。 特許6168999
茶抽出物の調製方法 小川香料株式会社 高級抹茶類が本来有している、まったりとした自然な甘さを各種飲食物に付与する素材の提供するため、抹茶を温水にて抽出し、該抽出液を向流接触装置(SCC)にて処理し、フレーバーを回収する第1の工程と、回収残液にさらに茶葉を加えて温水抽出し、固形物を除去後活性炭処理を行い、次いで濾過により活性炭を除去して茶抽出液を得る第2の工程と、第1の工程により得られたフレーバーと第2の工程で得られた茶抽出液とを混合する第3の工程とを含む。 特許4679362
粉末茶含有食品の褐変防止方法及び褐変が防止された透明容器入り抹茶飲料 アサヒ飲料株式会社 粉末茶を含有する食品の褐変を防止するために、有効量のビタミンCもしくはビタミンCとその塩類の混合物を当該食品、特に抹茶飲料に添加する。 特許3139680

これらの技術は、単に「美味しい抹茶飲料」を作るだけでなく、限られた抹茶資源を効率的に活用しながら品質を維持・向上させる重要な役割を果たしています。

2.今後の展望
世界的な抹茶ブームはしばらく続くと予想されます。価格高騰という課題はありますが、それが逆に新しい技術開発やビジネスモデルを生み出す契機にもなっています。

  • スマート農業の導入:生産効率を高め、供給不足に対応。
  • 抹茶代替素材や風味強化技術の発展:限られた資源を有効活用し、品質向上を目指す。
  • 海外企業とのコラボレーション:グローバル市場の拡大を促進。

抹茶は、伝統的な日本文化の象徴であると同時に、最先端の食品テクノロジーの舞台としても注目され続けるでしょう。

出典1:抹茶タイムズ『抹茶の供給難が深刻化|世界的ブームの裏で何が起きているのか?』
https://matcha-times.jp/2025/07/17/matcha-supply-shortage-global-boom/

出典2:特許情報プラットフォーム(詳細は登録番号から検索可能)
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/

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この記事を書いた人

Yoshiharu Takahashi(高橋)と申します。都内特許事務所にて弁理士として12年以上活動し、特許出願、FTO調査、無効資料調査など、これまでに累計2,000件以上の案件を担当してきました。主に化学・バイオ分野を中心に、国内外の知財戦略を幅広くサポートしています。

弁理士業務のかたわら、「食品×知財×経済」の交差点から現場の知見を発信しています。記事に関するご質問や、国内外特許に関するご相談は、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。特許のご相談については、フォーム送信後、所属事務所より折り返しご連絡いたします。

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