味の素冷凍餃子の『パリッと感』は“ギョーザの身だしなみ”?それを支える特許技術とは

こんにちは。今回は、味の素冷凍食品の餃子に隠された“科学の工夫”をご紹介します。

1.油なしでパリッと焼ける革命
味の素冷凍食品の公式HPでは「ギョーザ」発売50周年を記念して、「ギョーザ」の一人称視点で彼(彼女)の歴史が語られます。その中で、「油なしでパリッと焼ける」改良が大きな転機だったと紹介されています。

以下、90年代の「ギョーザ」のコメントです:
『1996年に生産用の機械が改良され、私にもやっと立派なミミがつくことになりました!ミミがあるのとないのとでは、かっこよさが全然ちがいます。見た目は、おいしさにもつながっていますからね。』

この「ミミがあるのとないのとでは、かっこよさが全然ちがいます見た目は、おいしさにもつながっていますからね。」から、“見た目へのこだわり”が感じられます。私は、こいつきっとオシャレやな、と思いました。

『でも、さらにすごい改良、もはや革命といえる出来事が翌年の1997年に起こります。それは、油なしでパリッと焼けるという改良で、これが発売されると同時に餃子界に激震が走りました!油なし調理は味の素グループが持っている特許をもとに開発された独自の製法で、…』

なかなか饒舌ですね。しかし、これで改良の裏側にある、味の素グループが取得した特許技術が特定できました。

出典1:味の素冷凍食品公式HP
https://www.ffa.ajinomoto.com/article/story/others/52144/

出典2:特許第3821178号(参考)
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-3821178/15/ja
*公式HPでは特許番号は書かれていませんが、関連が深そうな特許として参考に紹介します。

2.特許の課題は「冷凍後にパリッと感が失われる」こと
従来の焼き餃子は、一度焼いた後に冷凍や冷蔵で保存すると、再加熱したときに焼き面のパリパリ感(クリスピー性)が弱くなるのが悩みでした。

この特許では、焼き上がった餃子の表面、特に焼き面に 中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)を含む油を薄く付着 させて保存することで、 解凍・再加熱後でも焼きたてに近いパリッと感を維持できる技術が開発されています。

さらに、皮を二重・三重にした「多重構造の餃子」と組み合わせると、より効果的にクリスピー感を維持できるという結果も示されています。

3.他の油ではダメなの?
特許では、一般的なサラダ油や菜種油でも一定の効果はあるものの、長期保存では「油焼け」や食感の劣化が起きやすい、とされています。

一方で、MCTを使うと…
・冷凍後・再加熱しても焼き面がカリッと復活
・油っぽさが少なく、軽やかな食感に
・保存期間が長くなるほどMCTの効果が顕著に出る
といった特徴が実証されています。

4.なぜMCTでそんなことができるの?
MCTには他の油と違う物理化学的な性質があります。
冷凍しても固まりにくく、結晶化しにくい → 焼き面に均一な油膜を作れる
酸化しにくい → 長期保存でも油臭やベタつきが出にくい
サラサラしてよく広がる → 表面を均一にコーティングでき、水分の蒸発をコントロール

これらの性質が組み合わさることで、冷凍・解凍・再加熱という過酷なプロセスを経ても、焼きたてのクリスピー感を維持できると考えられます。

5.まとめ
味の素冷凍餃子の「油なしでパリッと焼ける」秘密は、MCTオイルを活用した特許技術にあります。
単なる油の使用でなく、MCTならではの性質を利用した科学的な工夫が隠れているのです。

また、この技術は冷凍餃子だけでなく、パンや揚げ物など、冷凍食品全般に応用できる可能性があります。家庭でもMCTオイルを少し使って試してみると、新しい発見があるかもしれません。

補足:家庭で試すときの注意点
MCTオイルは170℃前後で煙が出やすく、高温調理には適していません。直接フライパンで加熱するのではなく…
・調理の最後に薄く塗る、または餃子生地に薄く絡める形で使う
・オーブンや電子レンジの再加熱時に表面に軽く塗布する
といった方法が安全です。

味の素の特許でも、焼き上がり後にMCTを付着させてから保存する方法がとられています。家庭で応用するときも「焼いた後にMCTを使う」という順序を守るのがポイントです。

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この記事を書いた人

takahashi(高橋)と申します。弁理士として12年以上、特許出願・FTO調査・無効資料調査など、累計2,000件以上の案件を担当。化学・バイオ分野を中心に、国内外の知財戦略をサポートしています。

食品・知財・投資の交差点から現場の知見を発信中。記事へのご質問や国内特許・海外特許のご相談は、お問合せフォームよりお気軽にどうぞ。

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